某日某所
- 飯島朋彦
- 9月28日
- 読了時間: 3分
麦わら帽子を深く被った男が朽ちて葛に侵食されたプールサイドに佇んでいる
秋の夕日はオレンジの照明を当て、水面のゆらめきを微かに男に映す
舞台は古い学校のプール。仕切りに使い古されたビニールシートが一枚。流木がオブジェのように置かれ、観る側の向かいのプールサイドに椅子が一つ。
重低音や幻想的な音が響き、男のパフォーマンスは行われる
このプールで踊りたいという男の希望があったと、聞いてしまっていたので、いつプールにはいるのだろうと好奇な期待が先行してしまう。
刈払機のエンジン音。刃が石を当てるカンカンした音が聞こえている。装置の外のノイズ
だが、男のゆったりとしたパフォーマンスを観ているうちにノイズはキャンセルされて、記憶を刺激され、クロスオーバーする感覚になる。随分むかしにいくらかのパファーマンスを観てきたせいだ。山海塾…桃園会…維新派…太田省吾…ゴドーを待ちながら…3月の5日間…
流木のような木を一つ拾い上げた男がフェンスでカンカンと遊ぶ
と、ついに水に入るが、転ぶ。動かない男。
時間の経過が不安をもたげるころ、少女が向かいのプールサイドにあらわれ、据え置かれていた椅子の横で男をみつめる。
少女はゴドーさんは今日は来ないけど明日は来ますみたいなことは言わない。
その代わりに、椅子をバシャっとプールに投げて去っていく。
おれはあるワークショップで少年をやったことがある。ポッツォがちょっと近づいてきやがったので、ごっつい引きながらセリフを喋った。っていうか俺がゴドーなのか?いや会いたくないでしょそこのふたり組には。と思ったのだった。その時その場所そのキャストその芝居でなら。
椅子の落下の後、男は再び動き出し、フェンスのビニールシートをたぐりよせる、やはり遊んでいるように見える。水を含んだビニールの重さにアンカーがあり安心する。きっとそのプールはすごく滑るから。
落ちた椅子を隠すかのようにビニールシートでぐるぐると巻き、プールの角に押していった。
男は流木のような木製の小さな帆船を手にしてプールに浮かべ、空に浮かべ、プールをでて奥へと帰って行った。そのちいさな帆船は目を引くオブジェで、どんどん淡くなっていく夕日の、だが強さがありよく刺してくれる強い陽の光の偶然によく映えた。
プールサイドに残された青いビニールシート巻きの椅子は、黒沢清の蜘蛛の瞳のラストを思い起こさせた。陽の光と風の中、カカシをミイラに青く巻いたようだった。それが不吉なもののように思うのは、おれの心理がそう傾いているからだろうけれど。
ここで踊りたいと、演じてくださった方が挨拶をされて、終演になった。
投げ銭というはなしだったのだが、無料でとなってしまった。すばらしかったので、申し訳ない気持ちだったが部外者感もあり、妻に18:00までに帰ると言ってしまったのもあり、早々に引き上げた。
最後あいさつを聞きながら、ninoheronのhellloが脳裏によぎり、帰りの車で聴いて帰った。PVの舞台の雰囲気がなんとなく今日の舞台に似ている。
はにかんで
タイムスリップ
いつかはねって
笑った
ninoheron 『hello』より
素晴らしかった。
クローズドの、この一回だけのパフォーマンスを記録しておこうと思い褪せる前に書いた。
パファーマンスされた方
企画された若松夫妻
感謝。
2025/09/28






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